米国景気、サブプライム、CDO、SWF・・・Wharton看板教授の対談


ジェレミー・シーゲルと、フランクリン・アレンという、WhartonのファイナンスDept.の看板教授二人が、米国の景気動向についてカジュアルに対談したものがオンラインで聞けます。(スクリプトも近日中にアップされる予定)
http://knowledge.wharton.upenn.edu/article.cfm?articleid=1887

たまたまFEDが0.75%の緊急利下げを行った当日?に、このWhartonの看板教授二人の対談がセットされていたという偶然が面白い。



内容は、アメリカ景気に対して楽観的なシーゲルと、悲観的なアレンとがとても対照的で面白い。アレンは有名なBrealy and Myersの有名なコーポレートファイナンスの教科書の最新版から共著者となった人で、日本経済に詳しい。日本でのお気に入りは皇居を見下ろせるパレスホテルでの滞在で、滞在時には必ず皇居の周りをジョギングしつつ、この1週30分の敷地がカリフォルニアと同じ価値があったことに思いを馳せるらしい。

そのアレンは、
・資産価格の下落による経済へのインパクトは日本経済の歴史からみても長期に渡ること
(価格が大幅に下落する時には、どんなにインセンティブが与えられても買い手がつかず、金融政策のインパクトは限定的である)

と、

CDOの問題が未だに不透明であること
(不動産価格の下落に伴い、恐らく、さらに高いトランシェが吹っ飛ぶ時期が近づいているであろう、07年8月、9月の状況が再び起こりかねない・・・また、Inter-bankの取引が、これだけ銀行への資本注入とかWrite-offが進んできているのにも関わらず相変わらず不活発であることは、引き続き誰も現状を把握しきれていないことの表れである)

等を挙げ、米国景気の先行きにかなり悲観的な視点を示していたのが印象的だった。


Stocks for the Long run という、長期投資を説く名著で有名なシーゲルは、エネルギッシュな65歳のおじいさん。アレンのコメントに対して、日本経済との比較は適当ではない(バブルのでかさが違う)ことと、対応が遅れた日銀と違ってFEDが適切な対応をしていることなどを挙げ、Recession(=定義としては、2クオーター連続のGDPの減少)入りはあるかもしれないものの、比較的早く立ち直るとの見方。長期国債の利回りもものすごく低下しており、引き続き投資家は株式に投資すべきだという。(一方アレンは今は米国債のほうが良いだろう、との弱気)


景気見通しとは別に、面白かったのはSWFに対する見方。シーゲルはかねてより人口動態的に言って、米国の退職者が資産を換金する際にその買い手となるのはエマージング諸国とならざるを得ず(そうでなければ買い手の少ない資産は価値が下がってしまう)、米国は海外に買われるという状況(そもそも米国債は外人が持っているのであるし・・)に慣れなければいけない、という。(The Future for Investors」という著作に詳しく説明されています)

一方、アレンは、政治的な意図の絡む資金の性格には懸念をもっていて(CITIとかのファイナンスも、次のラウンドではControlに影響を与える形のStakeを渡さなければいけなくなるだろう、とのコメント)アメリカ人もそろそろ、株や土地がずっと値上がりするものではない、という現実を見据えて、貯蓄をするべきだ(=米国債も自分たちでファイナンスしよう)、という、まあ「べき論」としてはそうだよねえ、といった感じで本気かジョークか分からないコメントをしている。

以上、とても簡単な要約で恐縮ですが、ご興味のある方はぜひお聞きになってください。自分で熱くなって自分の世界に浸る傾向のあるシーゲルと、「ゲイでしょ?」と毎年のように授業開講直後に噂されるアレンのソフトな語り口。そんなWhartonの看板教授のトークに魅せられたあなたはぜひフィラデルフィアへ!