INSEADとWharton


Whartonの交換留学提携先のフランスのMBAスクールであるINSEADにて留学中です。

これまで米国のMBAで1年過ごしてきているけど、別の学校、とりわけ別の国の学校に来ることによってこれまでの自分の経験を客観的に見ることができるのはなかなか面白い。

まだ2日間の経験なので、今後印象が変わっていく可能性は高いが、今しかもてないフレッシュな視点もあると思うので、とりあえず日欧のMBAを経験して感じることを書きなぐってみると・・。

1.米国のMBAはあくまで「アメリカ」の学校。授業においても、学校の行事においても、基本的にはアメリカ人のスタンダードをベースに行われている。
たとえば、Whartonではあらゆる飲み会(学校主催で行われるものも)においてガンガンうるさいロックが流されて、とても会話を楽しむ環境ではない(ネイティブで声の大きい人には問題ないかもしれないが、ノンネイティブではとても英語が聞き取れる状況ではない)が、ここINSEADではより「交流」に重点を置いたパーティーがある。
授業においても、「株主主義」を前面に出してそれを全く×2疑わないところを前提条件として授業を進めるWhartonに対し、INSEADの教授(Valuationの授業)は冒頭で、「この授業においては、株主価値を重視する経営=Stakeholderの価値を重視する経営という前提で」といった説明をわざわざしてくれる。このような「配慮」はアメリカ、というかWhartonではせいぜい倫理の教授がしてくれるくらいで、他の授業では「時価総額の推移」を最も正しい経営の評価指標としている。

2.一方、「Internationalな学校」を標榜しているINSEADはやはり欧州の学校。欧州人率が非常に高く、逆に世界一の経済大国であるアメリカ人率が低い。これは「グローバルなビジネスパーソン」を目指す上では欠かすことのできない「大いなる田舎・アメリカ」への理解を深める機会を提供できていないということを意味するのではないか。また、フランスキャンパスであることもあるが(InseadにはSingaporeキャンパスもある)、アジア人率が非常に低い。インド人率も低い。Whartonの方が、人種的な多様性ははるかに高いとの印象。逆に、Whartonにおける欧州人率は低すぎるが。
細かいところまで言うと、トイレも「欧州仕様」。男性用便器のポジションが高すぎる。こういうこまごまとしたところで、自分はよそ者なんだ、という印象を受けてしまう。

3.一般に、アメリカの顧客サービスは非常に低い(高い金を出せば別だが)が、これはMBAスクール(一般化してよいか分からないが、少なくともWhartonに関しては)にも当てはまる。INSEADの「顧客サービス」はWhartonに慣れた自分には信じられないくらい良い。まず、授業で必要なケースやリーディングマテリアル等はINSEADではすべて無料(Whartonではクラスで配られる資料も含めすべてのものに関して追加出費が必要。年間約600ドル。)ITのヘルプデスクの対応もよい。学食みたいなものがあって、とてもおいしい食事(学食だけどいわゆるフレンチ料理)を超安価で食べられるのも良い(Whartonはカフェ「Au bon pain」があるだけ。高くて不味い。)。学内にフィットネスセンターがあって無料で使えるのも良い(Whartonは付近のジムの割引を提供するのみ。アメリカに「タダ」のものはない。)。そもそも、学生数に比してのスペースが広い(広大なキャンパス、ビルディング。Whartonは一学年800人、その上Undergradも同じビルを使っていて、本当にいつも混雑している。学校のスタディールームを占領するUndergradの存在は正直うざいなとよく感じる。)。

顧客サービスに通じるが、家族に対するサポートも良い。INSEADは、大学のファシリティ(ジムなど)へのアクセスを配偶者などに対しても自動的に与えるのに対し、WhartonはPenn大共通のPennカードを別途取得(年間20ドル程度の支払い必要)する必要がある。

と書いていくと、Whartonに対する不満がふつふつとわいてくる今日この頃。でも、結局こういう状況を実際に体験した上で、どちらの学校を選ぶか、といわれたら間違いなくWhartonを選ぶと思う。その理由1は、やはりINSEADではアメリカのビジネス観を学ぶことが難しそうだということ。Whartonでは嫌というほど米国的視点に触れさせられる。それが嫌なのは事実だが、残念ながら今の時代、それに2年間浸されてくることの意義は大きいのではないか。理由2は、英語はアメリカの方がうまくなりそうだということ。INSEADでは多くの人がNon-nativeなのに対して、Whartonは、”International”というカテゴリーに入る40%の学生のうちの大半が米国での学部生及び就業体験者であり、6割の米国人も含めるとほとんどの人がほぼNative並みの英語を話す。Non-nativeの中にいたほうが自分が発言する機会が増える面もあるかもしれないが、日々触れる英語がNativeのものであったほうが英語の上達に良いのは間違いないだろう。

・・といった第一印象が今後どう変わっていくか楽しみである。