Il Trittico (三部作)

2007/5/4 Metropolitan Opera



Il Trittico
by Puccini

Conductor: James Levine
Director: Jack O’Brien
Designer: Douglas W. Schmidt

IL TABARRO  「外套」
SUOR ANGELICA 「修道女アンジェリカ」
GIANNI SCHICCHI 「ジャンニ・スキッキ」


主要出演者
Maria Guleghina
Barbara Frittoli
Stephanie Blythe
Salvatore Licitra
Alessandro Corbelli
Juan Pons

自分にとっては今シーズン最後のMETオペラ。今日はプッチーニの「Il Trittico」(三部作)。

この作品は、一幕モノの作品3つによって成り立っているものなのだけど、それぞれの作品(とりわけ最後の「ジャンニ・スキッキ」)が単品で、または他の作曲家による1幕モノのオペラ(「カバレリア・ルスティカーナ」、「道化師」など)と共に上演されることが多い。

作曲者であるプッチーニ自身は、この作品は3つセットで上演すること、と言ったのだけど、上演する劇場側にとっては1晩で3人のメイン歌手を用意しなければならないため、商業的な困難が付きまとい、なかなか上演できない。結果として、彼の死後はとりわけ作品としての完成度の高い「ジャンニ・スキッキ」だけで演奏されることが多い(06年には日本でも二期会が単品で上演)。それだけに、今日はプッチーニの意図したとおりの形で上演される、なかなか貴重な公演だった。(ちなみにこの作品、初演もMETだったらしい。)

実際に観てみて感じたのは、確かに、3作連続で見ることによって各作品の面白みが違ってくるということ。それぞれ全く違う話を扱う3作は、いずれも自由や愛を希求する人の感情と、因習・慣習や宗教心などといった伝統的価値との対立・対比を扱うという点を共有している。この作品を見ると、当時に比べていかに現代人の我々が精神的に自由な生き方を普通に追求できていることかを実感する。また、当時のヴェリズモ(真実主義)という芸術スタイルの流れの中に位置づけられるこの手の作品は、オペラよりも映画や小説などを好む人にとっても、オペラの入り口として楽しみやすいのではないかと感じる。一つ一つが短くて、かつそれぞれが完結したドラマを持っていることが、ドラマを音楽で表現するオペラのダイナミックさ、面白さをより感じやすくさせるような気もする。

さて、とりわけ嬉しかったのは、今シーズン最初で最後となる、MET音楽監督のジェームス・レヴァインによる指揮で演奏を楽しめたこと。いつもすばらしいMETのオケがいつも以上に、信じられないくらいすばらしい演奏をしていてびっくりだった。レヴァインがすごいのと、音楽監督ということでオケとの関係が深いことと両方の要因があるのだろう。レヴァインアメリカ人らしくかなり肥満なんだけど、もう少し痩せて是非長生きして、どんどん良い演奏を残して欲しいと強く感じる。

歌手陣もシーズン最後の方のプログラム、かつレヴァインが振るものだけあって、しっかりした人で固めているという印象。とても満足のいく演奏だった。2番目に演奏される「修道女アンジェリカ」は主役のアンジェリカ役の仕上がりで全く感動が違ってきてしまう作品だけど、Blytheがとてもすばらしかった。Alessandro Corbelliのジャンニ・スキッキは完璧の一言。一方で、「ジャンニ・スキッキ」で超有名なアリア“O mio babbino caro”を歌うラウレッタ役のBarbara Frittoliにはちょっと不満が残った。



あらすじ(METのホームページより抜粋)

IL TABARRO
Maria Guleghina is the faithless wife, Giorgetta, and Salvatore Licitra is her doomed lover.

SUOR ANGELICA
Barbara Frittoli sings the role of the tragic Angelica, delivering Puccini’s famous aria of yearning, “Senza mamma.” Stephanie Blythe is the Princess, Angelica’s tormentor.

GIANNI SCHICCHI
Alessandro Corbelli sings the title role in Puccini’s comic masterpiece of comeuppance. The opera features the composer’s famous romantic aria, “O mio babbino caro.”