二期会 フィガロの結婚

オペラブッファ全4幕
字幕付き原語(イタリア語)上演
原作:P.A.C.d.ボーマルシェ
台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ
作曲:ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト
会場: 東京文化会館 大ホール
公演日: 2011年5月 1日(日)14:00


指揮: デニス・ラッセル・デイヴィス
演出: 宮本亜門

装置: 二―ル・パテル
衣裳: 前田文子
照明: 大島祐夫
振付: 麻咲梨乃
演出助手: 澤田康子

舞台監督: 大仁田雅彦
公演監督: 中村 健


キャスト:
アルマヴィーヴァ伯爵  与那城 敬
伯爵夫人        増田 のり子
ケルビーノ       下園 理恵
フィガロ        山下 浩司
スザンナ        嘉目 真木子
バルトロ        三戸 大久
マルチェリーナ     諸田 広美
ドン・バジリオ     坂本 貴輝
ドン・クルツィオ    森田 有生
アントニオ       原田 圭
バルバリーナ      馬原 裕子
花娘1         三宅 理恵
花娘2         醍醐 園佳

合唱:  二期会合唱団
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団

二期会創立60周年記念公演。若手を中心としたキャストの日程であり、この公演の千秋楽である5/1の公演を観に行った。ちなみに5/1はこのオペラの初演の日だとか。

音楽は、いわゆる「古典」的なモーツァルトの演奏というよりは、よりリリカルな感じで、すこしゆっくり目。オーケストラはディテールまできめが細かい演奏で、こんなに美しいオーケストレーションだったんだ!、と改めて感動するところ多数。歌の人が歌いやすい指揮だったかというとよくわからないけど、でも指揮者のデイビスさんが表現したい世界はよく伝わってきたし、それは、宮本亜門の洗練された演出、舞台道具と相まって、非常に清廉、かつ情感あふれる音楽の世界を作っていたと思う。
東京文化会館の音響の良さ+5F1列目真正面というかなりクリアな音響が得られる座席だったというのも、上記の印象に影響を与えているかもしれない)

「リリカルさ」はとりわけ、指揮者によるレチタティーボフォルテピアノ伴奏によくあらわれていたと思う。アンニュイさやはかなさを感じさせるフレーズの連続。オケの流麗さと合わせて、このオペラの印象を、いわゆる喜劇的なものではなく感じさせていたと思う。(コミカルに過ぎない演出も良かった)

そんな音楽に乗って歌いあげるアリアは、溜めるところはたっぷり、というやはり非古典的な表現で、各歌い手さんの声の良さもあって、「こんなにじーんとくるモーツァルトって初めて」というくらいにぐぐっときた。モーツァルトのメロディってこんなに可憐で綺麗だったんだ!

キャスティングはとても素晴らしかったと思う。役にばっちりはまっていたし、みなさんほんとに素晴らしい声をしている。あえて、特に印象に残った人を挙げるとすれば、素晴らしい表現力の嘉目さん(スザンナ)、歌っているだけではかなさがあふれる声の持ち主の増田さん(伯爵夫人)、官能的な芯のある響きがまっすぐ突き刺さる下園さん(ケルビーノ)。

宮本亜門の演出は、特に第4幕が秀逸と思った。疑念、嫉妬、怒り、赦し・・・めまぐるしく変わる登場人物の心と音楽とを、絶妙な人物の配置とシンプルなセットで表現していたと思う。今回のこの公演が、本演出による再再演であったというのも納得。以前ドン・ジョヴァンニ宮本亜門さんの演出で観たことがあったけど、その時も、シンプルな舞台装置から、音楽とストーリーとが伝える「コンセプト」をより強く浮き彫りにしていたという印象を持ったのを思い出した。