東京フィル 仲道郁代 阪哲朗

2015年1月18日(日)15:00開演
Bunkamura オーチャードホール

指揮: 阪 哲朗
ピアノ: 仲道 郁代


シューマン/ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
ベートーヴェン交響曲第6番 ヘ長調『田園』作品68

シューマンは言わずもがな美しい仲道さんのピアノを味わい流麗に進んでいったが、第三楽章の力強さには仲道さんのまた別の魅力を強く感じた。多少のミスタッチも構わず、オケを引っ張り呷るような演奏にしびれた。

田園は第一楽章が非常に速めのテンポ。でもよくよく調べてみると、楽譜が指定するテンポが実はそもそも早くて、世に出回る多くの録音はこれよりも遅めのものが多い。恐らくオケにとっても慣れない速度で、特に木管のフレーズなんかには「歌いきれてない」感じが伝わってきて、正直第一楽章を聴いた段階ではこの速度の意味合いが今一自分には伝わってこなかった。が、最終楽章が始まってみると、なるほど、この楽曲全体における、あのやや早めに感じる田園風景の意味が何となく浮かび上がってきたような気がするのが不思議。最終楽章も、最後の部分、神への祈りみたいな感じのところは透明感ある弦のアンサンブルをゆっくり聴かせてくれ、この曲全体の構造感の完成と共に、染み入るような感動を覚えた。

曲が終わって、まだ指揮棒が下される前に、「ブラボー」ならぬ、「イエイ!」と叫んだ方がおられて、観客どころか演奏者もびっくりだったとのことで、観客マナーとしては最悪だったが、それくらい感動した気持ちは共有した次第。