サラ・チャン

Nov 1-3, 2007
The Philadelphia Orchestra
Jiri Belohlavek, conductor
Sarah Chang, violin

MARTINU Toccata e due canzoni
MENDELSSOHN Violin Concerto in E minor, OP.64
BRAHMS Symphony No. 2

初めて聴くサラ・チャン。11月1日のプログラム最初の日と、3日の最終日と二回、足を運んだ。

コンサートはいずれも大盛況。あまりにも評判が良かったせいか、最終日である3日の当日チケットには長蛇の列。両日ともに、ほぼすべての観客がスタンディングオベーションだった。

メンデルスゾーンのコンチェルトはサラ・チャン的にはまさにはまる曲、という感じ。とりわけ、第二楽章は、たっぷり、しっかり聴かせてほしい人にはうってつけの表現。音がとてもきれいで、強弱のダイナミクスも大きい。技術も完璧。演奏中の「動き」も派手。一言で言えばとても情熱的な演奏だった。また、そもそもサラ・チャンフィラデルフィア出身ということも、熱狂的なお客さんの反応の要因であったと思う。

一方、個人的には不満もあった。彼女の演奏はなんというか、アンサンブルというよりは独走型、という印象。オケ&指揮者との緊張感のある戦い、というよりは、自分の音楽を自分のペースで突き進むというスタイル(もちろん、それがとてもすばらしくて感動を誘うのも事実)だなと感じた。とりわけプログラム初日にはこの傾向は顕著で、会場は大きく沸いたものの、とりわけ第三楽章は崩壊寸前、という音楽だった。

土曜日には指揮者の努力によってかなり改善していたものの(二度同じ公演を見ると、指揮者がいかに演奏者に適応していくかが分かって面白かった)、そもそもあのテンポの変え方というか、フレーズごとの時間のとり方では、たぶんどう指揮者が頭を合わせようと先回りして指示を出しても、オケが完全にはついてこれないのは仕方ないだろう。

一緒に聴いた友達が発した言葉が印象的だった。「これはエンターテイメントであって、クラシック音楽の演奏ではない!」この熱狂的なオーディエンスの反応の中、そんな発言をした友達に敬服。自分の思っていた複雑な気持ちを言い表してくれたみたいですっきりした。

そもそも、アメリカのオーディエンスは派手なパフォーマンスを好む傾向が強いと思う(ほかの例としては、ピアノのラン・ランとか)。結果として、アメリカで評価される演奏者と欧州で評価される人とは結構違いがあるのではないか、と思う。またいつかブログのテーマにしてみたい。


サラ・チャンの他では、このコンサートの最初に演奏されたマルティヌーの曲「トッカータと2つのカンツォーネ」がとても印象的だった。フィラデルフィアオケではもちろん初の演奏。コンサート全体としてはこの3楽章ある楽曲にリハの時間をとられてしまったのでは?という感じもしたが(とりわけブラームス交響曲2番がその犠牲を受けていた感が・・)、ピアノを含めたオーケストレーションがとても印象深い曲だった。

<自分勝手な備忘録>
指揮者は地味ながらしっかりした演奏をするタイプという感じ。木曜のブラームスは明らかに指揮の意図が伝わってなかったが、土曜日になってもそれほど演奏に改善が感じられなかった。盛り上げるところでしっかりもってってくれないのが不満。