MBAの価値(アカデミック面)

今クオーターの試験が終わり、これから1週間の春休み。
2年間のプログラムのうち、すでに37.5%が終了したという計算。信じられない速さ・・。

それでなくても夏休みが4ヶ月もあって実際の学期は短い上、それを4等分しているものだから、一つ一つのクオーターが本当にあっという間に過ぎ去っていく。こないだ授業が始まったばかりなのにもうテスト?みたいなことを3回繰り返して、今日に至るという感じ。

MBAって「ブランド価値付2年間のモラトリアム」だと思っているし、実際そういう側面はすごく強いのだけど、一応4割くらいのアカデミック生活を終えてみて思うのは、さすがに良くできたプログラムだな、ということ。多面的に経営を見る視点というものを身につけさせようという意図が良く伝わってくる。それぞれの個別分野は必ずしもMBAに来なければ勉強できないものではない。ただ、それらを一定の時期に一気に叩き込むことによって生まれる価値があるのだな、ということを実感している。

たとえば、以下、これまでに学んだいくつかの分野についての説明。

  • 統計学: 不確実なものを定量化し予測に利用。
  • ミクロ経済: それぞれ個別の費用関数や、情報の非対称性などの制約を持つ経済主体が経済活動をする結果、市場においてどういう均衡が生まれるか。その均衡結果を予測する各主体がまたどう行動するか。
  • オペレーション・情報管理: 諸前提条件の下での最適化の方法を学ぶ。それにシミュレーションと統計学を組み合わせることにより、不確実性下における最適化を実践する。
  • 競争戦略: 業界構造、事業リソースの分析に基づく、有利な競争条件の構築および維持。
  • ビジネスと政治: 市場原理だけでは説明しにくいNon-marketイシューに対する経営者としてのうまい関わり方について。

一見ばらばらして見える各分野だし、一般的には「つまらん」「実用的ではない」といわれるミクロ経済なんかもある。でも、こうして学んでくると、統計学が不確実性を定量的に取り扱うツールとして、また、ミクロ経済が企業行動を分析する最も基礎的なツールとしてMBAプログラムにおいて扱われているということがよく分かる。たぶんミクロ経済だけを勉強してもその意義ってなかなか感じられないのだけど、こうして集中的にやっていくことで、「均衡」っていう概念や、ゲーム理論というツールがものすごくいろんなものに通じる「原理」なんだということが分かるのだと思う。

また、個別学問分野は自分でも勉強できる、と書いたし、ずっとそう思ってきたけど、でもそうでもないな、と思える面もある。確かに、MBAで使うテキストを買って読んで、ケースを読んで、考えてれば確かにここで学問的に学ぶ内容の大半は学べるだろう。ただ、テキストにはないMBAの価値として、意外と「試験問題」ってのがあるような気がする。MBAにおける「学問」は、極端なほどに実務への応用を意識して作られている(そのアグレッシブさには時に無理が伴っている感もあるけど。)が、そんな努力の集積の一例として、期末試験や宿題に使われる演習問題がある。よくもまあ、こんなにいろんな実務的な切り口の問題を作ったなあ、と思えるくらい、よく考えさせ、現実の事象に即した問題が多い。本を読んで、ケースを読んで、議論に参加するだけで分かった気にはなるが、実際試験勉強や宿題などでくだらないと思われる反復演習をすることを通じて、フレームワークによる思考を「体で覚える」という状態になれる気がする。

・・と基本的にアカデミックな側面でのMBAの価値をポジティブに評価するものの、年間500万円という費用との比較でいくと、やっぱり高いよなーという感は否めない。これは、サービスの対価が異様に高いアメリカという国ならではのことなのか、「ブランド価値」という無形の価値に対する対価の部分が高いから教育サービス対比での割高感を感じるのか。まあ、後者がメインなんだろうけど。日本人的な感覚でいうと、これだけのサービス対価を取っているんだから、資料の誤字脱字をなくせとか、読めば一目瞭然の授業プレゼン資料を作れとか、背中の痛くなるような会場で試験受けさせるなとか、コマい部分から多数の改善を求めたい。