日興コーディアルの買収(続)


みずほが下記のような支援案を出したらしい。

みずほ、日興支援案を提示
 みずほフィナンシャルグループが27日までに、日興コーディアルグループに対して追加出資案を提示したことが明らかになった。株式上場が維持されるなら出資比率は10―20%にとどめ、上場廃止でも子会社化は見送り、業務協力などで信用補完する案が軸。上場の存廃にかかわらず傘下に収める方針の米シティグループの買収案と異なり、日興の経営の独立性を尊重する。

 みずほは傘下のみずほコーポレート銀行が日興に4.8%を出資しシティに次ぐ大株主。日興・シティの協議が表面化した後も追加出資に意欲的で、26日には日興と金融庁に改めて支援姿勢を伝えた。ただ、今後の海外展開を考えるとシティと全面対決するのは得策でなく、対抗TOB(株式公開買い付け)といった強硬手段には訴えない方針だ。(16:37)

(出所)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070227AT2C2700C27022007.html

以下雑感。

いかにも日本的で?な提案に見えるけど、実はよく考えられた提案だと思う。
みずほとしては、がっぷりTOB合戦をしても勝てないのは目に見えている(前回のエントリ)が、一方でCITIの日本における戦線の急拡大はできれば避けたいというのが本音のはず。そう考えれば、みずほにとっては日興を傘下におさめることができないにせよ、CITIの軍門に下ることだけでも阻止できれば投資の意味がある・・・そんなわけで、この10-20%出資という、戦略的には(少なくとも短期的には)あまり意味のないように見える出資提案となったのだろう。15%とか出資していても、ビジネス運営上シナジーを実現するのは相当難しい。みずほのロゴでもつけない以上、顧客は日興は日興だと思って付き合うし、日興は日興でフルラインのビジネスができるので協業の機会は少ない。さらに、大企業のUnderwritingでの協業といっても、日興CITIとのConflictもあるから限度は目に見えている。

独立性の維持をちらつかせてみずほの出資を受け入れさせておいて、とりあえず日興の経営陣が、仮にCITIがTOBを行ったとしても賛同意見を出しにくい状況を作る。CITIとしても、日興との合弁会社である日興CITIのビジネスへの(日興の信用失墜による)ダメージを防ぐことが目下最大のニーズなので、短期的には大きく事態を変更させる必要性はひとまずなくなる。

ただ、長期的にはCITIにとって日興コーディアルを買収するメリットは大きいと思われ、CITIがTOBをかければValuation的にそれ以上出せるところはいないと思われるので、買おうと思えば変えるはず。けれども、経営陣の賛同意見が得られない場合は敵対的買収となるわけで、日本での事業経験の長いCITIがそれに伴うさまざまなデメリットをどう評価するか・・がポイントとなるだろう。・・昨今の世の中の変化を見ると、CITIならそんなことをあまり気にすることもないようにも思われるが。
ただ、最終的にそうなったとしても、みずほはおそらくそこでプレミアム付で日興株を売却できるはず(今回の救済出資は現在の市場価値をベースとした第三者割当でやるだろうし)。すでに投資した4.8%程度の出資額がどの程度か知らないが、その分で蒙った損失を取り戻すくらいの売却益はでるかも。

みずほの提案はとりわけ日興が上場維持できた場合に有効。日興が上場廃止となったとき、その他の株主は当然Cash-outを望むから、100%買ってくれる人が現れたら喜んで売却したい。経営陣にもみずほの提案ではなく、TOBによる100%買収提案を呑む方向へのプレッシャーが増す。
上場廃止の有無は今東京証券取引所が検討中。この証券取引所という組織、本来独立性と中立性が最も重要なはずだが、意外と会員証券会社との関係などにも気を遣って、個別企業の判断基準等がぶれたりすることがある。そういえばみずほ証券は今東京証券取引所とは例のみずほ証券による誤発注問題で係争中のはず・・。金融庁には外資擁護派と国内派が居そうだし、なんだかこの辺のNon-marketなイシューとのからまりが色々と透けて見えてくる。