阪哲朗、紀尾井シンフォニエッタ

紀尾井シンフォニエッタ東京
第91回定期演奏会

2013年9月7日
紀尾井ホール

指揮 : 阪 哲朗
Conductor : Tetsuro Ban

曲目
蒔田尚昊 : 組曲「歳時」 2012年 新日鉄住金文化財団委属/世界初演
ドビュッシー=カプレ : 子供の領分
ルーセル : 小管弦楽のためのコンセールOp. 34
マルタン : 7つの管楽器とティンパニ、パーカッション、弦楽器のための協奏曲

  • Programme-

Shoko Maita : Suite"The Annual" (Commissioned by Nippon Steel & Sumitomo Metal Arts Foundation in 2012, World Premiere)
Debussy (orch. Caplet) : Children's Corner
Roussel : Concert for Small orchestra, Op. 34
Martin : Concerto for seven wind instruments, timpani, percussion, and string orchestra

久しぶりの阪哲朗さんの指揮による演奏を聴いた。

世界初演の蒔田氏の「歳時」。日本の文化や歴史を背景にした日本人固有の四季を描いたもので、これを外国人が理解するには予習が必要な音楽だなという印象。一方日本人の自分には非常に深く響くものがあって、自分が日本人であることを思わず強く実感させる音楽だった。

その他はすべてフランスものの近現代の音楽が中心。カプレ編のドビュッシーは初めて聴いたが、あのピアノの名曲のフレーズををクラリネットがもこもことなぞったりするところが可愛かったり、ピアノだけでは見えない曲の世界を編曲がさらに拡大して見せてくれる、だからといって元々の曲の洗練された良さを失わせてない、そんな素晴らしい作品だった。

後半の珠玉はMartin。管楽器のみなさんが後列に横にならび、それぞれが楽器の個性を生かしたソロを応酬する姿には、まるで様々な音域のオペラ歌手が舞台で交わっているような感覚を感じた。情報量が半端なく多くて指示の明確な阪さんの指揮ならではの、個性がぶつかりながらも素晴らしいまとまりを保った演奏だったと思う。

紀尾井シンフォニエッタ東京を聴くのは初めてだったが、この中型?なホールの音響にぴったりな音の世界を届けてくれる、クオリティの高い素晴らしいオケだった。バイオリンのほとんどが女性というのも印象的だが、管の部隊の渋さと安定感が特に印象に残った。休憩時間にシャンパンやワインを嗜む紳士淑女が比較的多いのもこの紀尾井シンフォニエッタ定期演奏会のちょっとした特徴かもしれない。都会の喧騒からやや離れた立地もあいまって、現実を離れちょっと優雅な気分にさせてくれる、なかなか良い休日の午後のひと時だった。また他の演奏会もぜひ聴きにいってみたいと思う。