映画「オーケストラの向こう側」フィラデルフィア管弦楽団の秘密


5月末、フィラデルフィアオーケストラの日本公演が終わろうという頃に、アメリカ生活を終え日本に帰国したのですが、帰ったらこんな映画がやっているはずだから是非観て、というフィラデルフィアオケの楽団員さんからメールが。渋谷のユーロスペースという、ラブホ街のど真ん中に立つ、マイナーなものばかり上映している映画館に足を運んだ。

この映画、実際には2003年に作られたもので、今回のフィラデルフィアオケの来日に合わせて上映されたもの。フィラデルフィアオケの楽団員を主役としたドキュメンタリー映画のようなもので、それぞれが音楽という芸術を言葉にして語ったり、彼らの日々の生活を描くことにより彼らがどう音楽に取り組んでいるのかを見せてくれたり・・といったもの。当然、全編にわたって音楽が流れており、内容もさることながら、そのすばらしい演奏を聴いているだけで心が洗われ、感動で涙が出そうになる。

とりわけ感動したのは、コンマスのDavid Kimが、その生い立ち、母親の死、そしてソリストからコンマスへ転向するまでの半生を語っている場面。音楽の英才教育を受け、チャイコフスキーコンクール入賞、それを機に多くの有名オーケストラと共演するも、そのうち米国内の中堅オケとの共演がメインとなってきたという現実を受け入れられずに悶々としていた日々。ある日観た映画をきっかけに、オーケストラ入りを決意した・・という内容。何がどう感動した、ということではなく、そんな彼の語り口から彼の人柄がよく伝わってきて、それが彼の演奏の記憶とオーバーラップするような感覚か。


すでに上映は終了してしまったようですが、一応Amazonで英語版は購入できるみたいなので、音楽ファン必見です。