プロコフィエフ交響曲第5番

May 10, 2008
Verizon Hall



The Philadelphia Orchestra
Christoph Eschenbach, conductor
Theirry Escaich, organ

DALBAVIE La Source d'un regard
ESCAICH Organ Concerto No. 1
PROKOFIEV Symphony No. 5



今シーズンの定期公演の最後から2番目のプログラム。先週「千人の交響曲」をやったばかりで大変だと思うのだが、今日のプログラムの前半は2曲とも現代のフランス人作曲家による作品。

DALBAVIEは、フィラデルフィアオケの楽団員さんたちにも評判の良い作曲家とのことで、とても美しい作品だった。この曲はこれがアメリカ初演、世界初演は同じく今年のコンセルトヘボウによる演奏だったらしい。美しさと面白さのバランスがとてもよく取れた作品で、現代曲でありながら心地よく聴ける。ちゃんとスパイスも効いているのだけど、食べやすい、という感じ。他の曲にもぜひ触れてみたくなる。

2曲目のEscaichの作品は、オルガン協奏曲であり、Escaich自身がオルガンを演奏。こちらは一転、なかなか激しい曲だったが、でも意外と聴きやすかった。それにしてもオルガンの音はパワフルである。フィラデルフィアオケの美しい演奏を、ミレーの美しい風景画のやわらかさだとか、ヴェラスケスの精緻な美しさとたとえるとすれば、その上に、まさに物理的に天井から鳴り響くオルガンの音はアクションペインティングのよう(失礼な表現だが・・)。もっと分かりやすくいうならば、オケを飲み込まんとするゴジラか何かのように響く。Volumeは場面場面においてうまくコントロールされていて、オルガンとオケのアンサンブルには聴き処も多かったのだが、やはりオルガンがフォルテになると、ペンキを上からべっとりかけられてしまったヴェラスケスの絵のごとく、正直オケが全く聴こえなかった。もはや弦の演奏を目でみることによって、どんなアンサンブルをしているのかを想像するまでである。ちょっとその辺は勿体無かったなあ、と思った次第。・・・オルガンとは別に、印象的だったのは比較的眺めのチェロのソロパート。もの凄くすばらしい演奏に感動。


後半はプロコフィエフ交響曲5番。1944年の作品なのでまさに戦時中のものであるが、1941年の作品であるショスタコーヴィッチの7番とは違い、結構ポジティブな雰囲気、味わい深さに満ちた曲。今年の日本公演でも予定されている曲であるが、本当に美しかった。第二楽章の長いスケルツォではオーケストラのすばらしい演奏を十分に味わえるし、弦セクションが奏でる深淵さのあるメロディは本当に美しい。いつもは怖い顔をして指揮をするイメージの強いエッシェンバッハも、今日は結構うれしそうに振っていたのが印象的だった。

終演後は、楽団員の知り合いの方の計らいで、なんとマエストロ・エッシェンバッハに会わせて頂いた。留学中のこの2年間、演奏を楽しませてもらったことを伝えつつ、昨シーズンにパリ管との演奏も聴いたが、フィラデルフィア管との演奏のほうが好きだ、といったら、「私もそう思う」と言っておられた。ステージ上の迫力、個性のある演奏とは打って変わって、とても物静かな方、との印象を得た。

さらにその後は、楽団員お二人とワインを傾けながらお話させていただく機会まで!音楽の話はもちろん、豊富な海外ツアー経験に基づく色々な国の文化に関する話や、ワインの話などなど、話題は尽きず夜遅くまでお付き合いいただいた。フィラデルフィア生活最後のギリギリになって、こんな貴重な経験が得られるとは。ご紹介下さった近所の日本人ご夫婦に大感謝!