リゴレット

2007/10/7 @ The Academy of Music
Opera Company of Philadelphia

Rigoletto
by Giuseppe Verdy



RIGOLETTO  Alan Opie
GILDA  Chen Reiss
DUKE  Matthew Polenzani
MADDALENA  Kirstin Chavez
SPARAFUCILE  Julian Rodescu

Conductor  Corrado Rovaris
Director  Robert B. Driver

友人が日本からフィラデルフィアに遊びに来てくれているので芸術漬けの日々(テスト間近だというのに・・)。
今日はOpera Company of Philadelphia主催によるリゴレットを観にいった。

このオペラ団体による公演にいくのはこれが二度目。前回はロッシーニシンデレラ。超現代的演出にかなりひいてしまい、しばらく足を運んでいなかっただが、今日は大当たりだった。

歌手陣の質がとてもよかった。なによりもジルダ役のReiss。出だしこそ不安定なところもあったが、徐々に調子をあげて、1幕後半のアリアを完璧に仕上げるところはさすが。カデンツァのE♭の音もばっちり。最後の死ぬ場面も最高の表現で締めくくってくれた。
同じ演目は去年METでも観たが、演出面でしらけてしまい、あまり満足できなかった。が、今日とても感動できたのは、やはり何よりもジルダの表現力によるものだと思う。歌はもちろん、演技もうまかった。

また、つい2日前にMETでオペラを観た後だからより感じたのが、ホールの違い。METは大規模ホールだが、ここAcademy of Music(全米最古のオペラハウス)は、ヨーロッパの地方都市にありそうな、とても典型的なオペラハウス。サイズもMETに比べればかなり小さいし、残響もほとんどない。そもそもヨーロッパの古いオペラハウスがそのように設計されているのは、残響があると歌詞が聞き取れないからだと聴いたことがあるが、歌詞云々だけでなく、大規模な合唱、ソリスト陣による重唱、そして大規模なオーケストラによるアンサンブルを聴くと、残響が少ないこと、ホールが小さめであることの大切さをとても認識する。残響が少ないことによりあらゆる音がはっきりと聴こえるため、より巧みなハーモニーの面白みを鑑賞することができたし、新たな発見もたくさんあった。そんなところも、今日の演奏にとても満足できた理由のひとつかもしれない。

ちなみにこのリゴレットという作品、ヴィクトル・ユーゴー原作で、ヴェルディがオペラ化しているわけだが、ユーゴーは最初オペラ化に大反対だったらしい。その彼の考えを変えたのは、完成したオペラにおいて非常にうまく織り込まれている四重唱だったとか。3幕の冒頭、リゴレット、ジルダ、マントヴァ、Maddalenaによる四重唱があるが、まったく立場の違う4者の心情をひとつのアンサンブルがまとめてしまう巧みさはまさにオペラならでは。ユーゴーも「複数の登場人物に同時に語らせるのはオペラしかできない」と納得したらしい。

(ホールの話に戻るが)そんな重唱を聴くようなとき、より残響のない環境の大切さを認識する。このオペラは何度か観ているが、今日ほどこの四重唱に聴き入ったことはなかった。歌手および指揮者の力量も当然あるが、改めてホールの重大さを認識した次第である。


そういう観点からすると、日本のホールは概して残響が多すぎると思う。多目的ホールとして作られるから仕方ないのかもしれない。そう考えるとフィラデルフィアのこのAcademy of Music、ここに住んでいるうちにもっと頻繁に行っておくべきだなあ、と認識。NYのMETももちろん良いが、METにはない魅力を満喫しておきたい。