フィラデルフィアオケ定期・五嶋みどり

2007/10/6@Kimmel Center
Philadelphia Orchestra

Conductor: Christoph Eschenbach
Violin: Midori



Roman Carnival Overture Hector Berlioz
Violin Concerto, Op.15 Benjamin Britten
Iberia Claude Debussy
La Mer Claude Debussy

五嶋みどり出演のフィラデルフィアオケ定期。


実は何気にフィラデルフィアにはコンスタントに来てくれているらしい。去年はソロリサイタルだった。やはり米国在住ということが大きいのだろう。こうしてコンスタントに演奏に触れられることをとてもうれしく思う。


今日の曲目はブリテンのコンチェルト。平和主義者であるブリテンが、第二次世界大戦開戦直前、20代半ばのころに作曲した作品。時代は新しいが、いわゆるモダン系の音楽に抵抗感のある人でもかなり聴きやすい音楽。調性を失わず、いい塩梅で近代と古典がミックスされている。曲のメッセージ等の解釈については良くわからないが、自分にとっては長い深く荒涼とした雰囲気から長調を基調とした音楽に変化していくところに、反戦を願うブリテンのメッセージみたいなものを感じ、この曲をとても好きになった。


ただ言うまでもなく、上記は演奏がすばらしかったからこその感想である。本プログラム3日目ということもあってか、指揮者・オケとバイオリンの息もぴったり。五嶋みどりの演奏は本当に「研ぎ澄まされた」音、という表現がぴったりで、作曲者の意図と彼女の解釈、音楽の流れがもたらす自然な力をありのままに伝えてくれたような気がする。こんなに完璧な演奏をするバイオリニストはそうそういないと思う。聴くたびに本当に感激する。(先日のムターががっかりだったのでよりそう感じる面もあるかもだけど・・)


後半のプログラムは、実は今年6月にパリ管が、同じくエッシェンバッハの指揮により演奏したものと全く同じ。パリ管との違いをまざまざと見せ付けられた。Iberiaはより曲の持つエキゾチックなリズム感がいきいきと表現され、La Merは弦、管ともに格段に美しかった。ただ、ある意味自分のペースを守って、指揮者への反応がいまいち鈍く感じられるパリ管の音は、あれはあれでアンニュイな雰囲気がドビュッシーらしいのかもしれない、と思ったりもした。フィラデルフィアオケは指揮に素直に反応し、とても性能のよいF1カーのよう。


総じていえば、こんなに満足度の高いコンサートは滅多にない。最初から最後まで最高の演奏が聴けた。本当に満足な夜だった。