ペレアスとメリザンド

5/11/2007
Staatsoper Stuttgart (シュトゥットガルト歌劇場)


Plleas et Melisande (ペレアスとメリザンド)
By Claude Debussy


Conductor: Tetsuro Ban (阪哲朗)
Production: Jossi Wieler and Sergio Morabito


Will Hartmann (Pelleas)
Alla Kravchuk (Melisande)
Oliver Zwarg (Golaud)
Liang Li (Arkel)
Helene Schneiderman (Genevieve)
Sunhae Im (Yniold)

オペラ「ペレアスとメリザンド」はドビュッシーが作曲した唯一のオペラ。10年程の歳月をかけて完成させた力作で、さらに、演奏のたびにどんどん修正を入れていった結果、いろんな版が残されているらしい。今日はその中でも、舞台転換が行われない演出を意図して作られた、初演版に最も近い版による演奏だった。


このオペラを観たのは今回が初めてで、かつ字幕もドイツ語なので、事前に話の内容は調べていったもののディテールは分からなかった。そのせいか、より音楽による表現のすごさを感じることができた。当たり前だけどドビュッシーらしい音楽。水とか波のように、すべてが連続的に、でもドラマは刻一刻と移り変わって行くような感じ。色彩描写を音に変えたようなドビュッシー管弦楽の音楽って眠くなることが多いのだけど、オペラだと視覚的に場面変化及び登場人物の心情変化が見て取れるので、より音楽表現の巧みさを楽しむことができた気がする。

演出はとても現代的だった。場面は病院、Goloudは医者。院内の廊下と二つの部屋のみがステージセットで、セット一面白い壁。そこに子供役Ynioldがカラフルな絵の具でアクションペインティングばりに絵を描いたり・・と、抽象度が高く概念的な演出で、観ながら常に「これはどういうことだろう?」と考えさせられる感じ。モダンアートを観ている感じか。ドビュッシーの音楽がまた「曲」というよりは「流れて行く空間」という感じだから、ステージに目を取られていると音楽にまで集中が行き届かなくなる、と他の人は言っていた。なるほど、それも現代的演出のデメリットの一つなのかもしれない。
やはり、初めてのオペラを観るときは演出はトラッドなものがいいと思う。何回も観たオペラなんかは、たまには過激な演出で違う面を楽しむのも良いが。

演奏はとてもすばらしかった。シュトゥットガルトのオケの音はとても美しかった。とりわけ弦の音が、ドビュッシーの曲のせいもあるかもしれないが、とても滑らかで美しかった。演奏するのはとても大変そうなオペラだが、指揮者がとてもきめ細かく指示を出していて、聴いていて危なっかしく感じる場面もほとんどなく、とても気持ちよく演奏を楽しめた。