アイゼナハ歌劇場

5/12/2007
Landes-theater Eisenach
5. Sinforniekonzert der Landeskapelle Eisenach


Conductor: Tetsuro Ban (阪哲朗)
Solist: Korbinian Altenberger - Violin


BEETHOVEN
Violin Concerto D major op.61
Symphony No. 5 C minor op.67

昨年末から年始にかけて4泊したアイゼナハにまた戻ってきた。前日のシュトゥットガルトでのオペラに引き続き、音楽監督である阪哲朗の振るコンサートを鑑賞。阪哲朗指揮のベートーベンを聴くのはいつぶりだろうか・・。彼の指揮で「運命」を聴くのは、東京フィル、東京シティフィルに続きこれで三回目。一方、バイオリンコンチェルトはこれが初めてだった。

バイオリンのAltenbergerは24-5歳の若手。今シーズンはアイゼナハオケとは何度も共演している。男性だが線が細い感じの繊細さのある演奏。歌心を感じさせる演奏。でもダイナミックな部分には強さもあって、物足りないなんてことはない。聴いていてとても心地の良い演奏だった。音もとてもきれい。彼はこの若さでケルンだかどこかのオケのコンマスになることが決まっているとか。今後はソロ活動は少なくなるのかもしれないが、また別の機会に聴いてみたいと思った。

オケは、前回聴いたNew Year Concertの時よりも数段うまくなっているような気がした。あれからたった4〜5ヶ月しか経ってないのに・・最初の音が鳴った瞬間から変化を強く感じる。音楽監督の下でめきめきと腕を上げてきているのが良く分かった。「運命」の好演もさることながら、個人的にはコンチェルトでの演奏にとても感動。とてもきれいなハーモニー。ソリストとの息もぴったりの演奏で、曲のすばらしさをしっかりと満喫させてもらえた。

演奏後は会場ほぼ全員がスタンディングオベーション。前回にも書いたが、ここチューリンゲン州(旧東ドイツ)は失業率も高く、州・市の財政がとても厳しいらしく、オーケストラ・歌劇場は現在軒並みリストラの危機にさらされている。そんなタイミングでの「運命」の演奏(ドイツでは「運命」というタイトルは頻繁には使われないらしいが)に、涙をしているお客さんも多数。演奏終了後、音楽監督の阪さんがドイツ語で観客に向かって10分ほど話をした後で、アンコールとして第4楽章を再び演奏。アンコール終了後も拍手はなかなか鳴り止まなかった。

旧東ドイツの地方の歌劇場は、社会主義政府の元、芸術の保護という大義によって支援を受け続けてきたらしい。ドイツ統合で資本主義の波に飲まれた今、財政悪化の中で、芸術支援への支出が減るのは仕方のないことだと思うし、音楽の歴史は金持ち貴族の支援によって多くが築かれてきたというのも事実。そうなると、金持ちの「慈善」(偽善的な意味もこめてかぎ括弧)行為としての寄付に多くを依存している米国のオケなりオペラハウスのあり方こそが芸術の生き残る唯一の道なのかもしれない。でも芸術の公共的価値ってあると思うし、でも芸術への支出のリターンは測定が困難だし、その辺をどう折り合いをつけていくのかってすごく難しいことだと思う。


(写真:劇場の存続を訴える人々の写真)