フィラデルフィアオケ定期・ゲルギエフ

February 10, 2007
Verizon Hall
Debussy and Schubert

The Philadelphia Orchestra
Valery Gergiev, conductor

DEBUSSY Prelude to the Afternoon of a Faun
DEBUSSY La Mer
SCHUBERT Symphony in C major ("Great")



人気のゲルギエフの公演に行ってきました。
フィラデルフィアオケはよく振りに来ているみたいで、珍しくほぼ完売状態。いつも買っている3階の一番後ろの席(一番安いけど実は一番音のバランスが良い)まで完売だったので、今日は学生の特権を生かして学生チケット(Student-voucher)を利用。これは1Fの席の空いているところに座らせてもらえるもの。公演が始まる直前に空席にはめられるのだけど、1曲目が終わった時点で来るお客さんもいて、その場合にはまた別の空席に移動・・と流浪の民みたいに落ち着かないのだけど、何と言ってもたったの7ドルなので文句はなし。


ゲルギエフはモスクワ出身の飛ぶ鳥を落とす勢いの指揮者。日本で何度か聞いているのだけど、実はあまり好きではない。濃すぎるというか。これまで聴いた曲がロシア物だったことも要因かも。
でも今日の演奏にはとても満足でした。

前半ドビュッシー、後半シューベルトという選曲はなかなかいいバランスだなという印象。La MerはCDではなくコンサートホールで聴きたい曲No.1といった感じで、まさに海の印象派の絵画を感じさせるような音楽。基本的に眠くなることの多い曲だけど、ゲルギエフは退屈させることなくメリハリのある演奏。

後半のシューベルトはすばらしい演奏でした。スタンディングオベーションも多数。
実はこの曲、ぜんぜん好きじゃなかった(むしろ退屈で嫌いだった)のです。大して印象的でもないメロディーが繰り返されて、かつ長い(50分くらい)。Cメジャー(ハ長調)というキーがまた妙な安定感を生み出して、結果として数々のメロディーがよりいっそう芸のないものに思えてくる、そんな印象でした。
ところが、いざ演奏が始まると、ゲルギエフはとても速いテンポで第一楽章を突っ走っていってくれて、これまでの印象を取り払って、この曲の別の側面が見えた気がしました。単調でつまらないと思っていた旋律がなんだかテンポよく移り変わる風景の中で生き生きとしだした、という感じ。その後もこれまでの悪いイメージがうそのように気持ちよく演奏に集中できました。

シューベルトって、シャイで暗いイメージが強いけど、この曲は比較的幸せにあふれていたころに作られたらしい。ちょうど作曲の直前にいろんな町に旅に出ていたらしく、第一楽章のメイン主題はオーストリアの湖や山を感じさせるイメージらしい(解説書によれば・・)のだけど、まさにそんな感じ。考えてみれば彼がこれを作曲したころってまだ20代だし(シューベルトは31歳で死去)、彼が作曲した最後の交響曲とはいっても、やっぱりこういうテンポが若々しくてあうのかもしれない。