The Metropolitan Opera
2007/1/11 19:30-

I Puritani (清教徒
Vincenzo Bellini


Conductor: Patrick Summers
Production: Sandro Sequi

Elvira: Anna Netrebko
Arturo: Eric Cutler
Riccardo: Franco Vassallo
Giorgio: John Relyea




今年初オペラは最高でした。
ネトレプコを聴いてみたくて、シーズンチケットには入ってなかったプログラムを急遽購入。

それにしてもびっくりなのはチケットの安さ。学生の特権をいかして(MBAは金曜はお休み)木曜の夜の公演の一番安い席を取ったら、なんとたったの15ドル!!! 公演のレベルはいままでMETで見た中では間違いなくベスト。・・日本で新国立劇場で一番安い席といったらたぶん3000円で、学生割引でようやく1500円とかになるはずなのだけど、木曜の夜は安いとかそういうフレキシブルな運用ってしてるのかな?と少し疑問に思った。

清教徒」はベッリーニの有名なオペラの一つだけど、同じくベッリーニの有名な「ノルマ」と同じくそんなに頻繁には演奏されない演目。理由はたぶんすごく歌が難しいから。・・ソプラノの技術はもちろん、テノールが半端じゃなく難しそうだった。

そういう意味では今日この公演を、今もっとも注目されてるソプラノ、ネトレプコ(写真)で聴くことができて本当にラッキーだったと思う。

ネトレプコはもうすっかりスター!って感じ。お客さんもネトレプコ目当てがほとんどでは?という雰囲気で、正直逆にいうと客のマナーはこれまで行ったオペラ公演の中で最低だった。
携帯電話が公演中に10回近く鳴ったのはどう思い出してみてもこれが初めてだし、腕時計はピーピーなるし、場が変わるところでしばらく待たされるところではBlackberryでピコピコメールを打ったり、電話で話したり・・・!
木曜の夜なのでビジネスマン的にはそうとう忙しいのは自分もそういう身だったのでよく分かるけど、それにしても何とかならないか、と思った。

そもそもMETって観光地の一つになってしまうので、どうしてもお客さんの聴くマナーは悪くなりがち。そういう意味では毎回ストレスを感じるんだけど、今回ほどの状況は初めてでした。

それはともかく、演奏は「さすが」の一言。ネトレプコは決して重くはないけど結構しっかりしたリリコな声を出せるのに、コロラトゥーラも完璧、っていう、稀有な声の持ち主なんだな、と思った。幕によって違う声質が求められる「椿姫」でかなり好評を博してCDも売れているという理由が良く分かる。どんな音域もどんな場面もしっかりとした密度の声が持続できて、長い音を客に届かせる場面ではほんとに耳元で声が鳴っているかのように響く。このまま声が成熟していくとカラスみたいなっていくんだろうな、と勝手に想像。

登場の瞬間に会場から拍手がおき、有名な二幕の「Qui la voce」では、歌はもちろん狂乱の演技も最高。舞台の前方の端で仰向けになり、首だけ舞台から落として(頭に血が上る!!)逆さに客席に向かって歌う場面にはお客さんもあっけにとられてた。

でも今日の演奏がすばらしかったのは、ネトレプコだけでなくてその周りの男声陣が完璧だったから。恋人役のArturoはテノールなんだけど、これがまた良く歌えるな、というアリアの連続。でも最後の最後までまったくミスなく歌いきっていて、本当に関心。

ベッリーニは美しいアリアが多いので、コンサートではよく演奏されるけど、前述の通りオペラ公演は意外と少ない。05年11月にノルマをサンフランシスコ・オペラで観て以来、ベッリーニのオペラは二回目だったけど、オペラとしてのできは清教徒のほうが高いなあ、と思った。より音楽と状況がうまく組み合わさっている感じ。・・それとも、指揮者ないし歌い手の技術の差が出ただけなのかな。ベッリーニの時代の音楽って、悲しい場面なのに長調でノリのりの音楽がなってしまったりするので、お客さんによってはそういう場面で失笑している人も多かった(これはサンフランシスコでノルマを見たときも)のだけど、そこを悲しく聴かせるのはまさに演奏者の腕なのだと思う。それが今回は(失笑はあったにせよ)うまくできていたということなのかも。