ymellon2006-12-22



12/22/2006

Rigoletto
by Giuseppe Verdy


Conductor: Friedrich Haider
Production: Otto Schenk

The Duke of Mantua: Piotr Beczala
Rigoletto: Carlos Alvarez
Gilda: Ekaterina Siurina
Giovanna: Diane Elias
Monterone: Stephen West
Sparafucile: Robert Lloyd



METでみるオペラはこれが今年最後だったのですが、今年3つのうちではベスト!といえる演奏でした。ちなみにMETの今シーズンのリゴレットはこれが最後だったようで、それも完成度の高さの一因だったかも。

リゴレットヴェルディの傑作のひとつで有名なアリアも多いのだけど、意外と頻繁には演奏されない演目。見終わった後に気分が優れない話(下記)の筋のせいだと個人的には思っている。

(あらすじ)
道化師という蔑まれた立場のリゴレットが溺愛する一人娘が、超女好きの公爵に犯されてしまう、、が純粋さ故にその公爵の甘い言葉を信じて彼を愛してしまう。リゴレットが公爵に復讐しようと殺人を計画するが、ジルダが公爵を守るために自ら犠牲になって死んでしまう・・。


ああ、気分悪い。

どうして彼女は死んでしまうのか、これは純粋さ故の早まった行為と片付けてしまうのが一番シンプル・・なんだけどそれだとドラマチックな音楽との関係がちぐはぐな・・・もはや狂乱な状態、というのは分かるけど、どう登場人物の感情を理解すればいいのか、その辺がいつも腑に落ちない&結果として深く心を動かされるほどには感動できない。

そういう観点では、全体の演奏者のレベルがとても高く音楽的には満足のいく今回の演奏も、演出面でとても不満がのこりました。

とりわけ三幕のジルダが自分の命を捨てることを決意する場面はとても安っぽくなってしまっていた。
たとえば男に変装して逃げるよう言われたジルダが考え直して戻ってくる場面。すでに変装してた上にそれがズボンをはいた「あかずきんちゃん」みたいな衣装で、興ざめ。あれ、「ケルビーノ」?みたいな感じ。

その後のアリアも、なんだかほんとに純粋無垢さを狙ったような歌い方で(本当はもっと別の歌い方ができそうな歌手なんだけど)いまいち混乱した精神状態を描けてなかった。結果として死んでしまう場面を見ても、「あ、死んじゃった。若いってこれだからねー。」みたいな軽さがあってとても残念。

少なくともドレス着てたらもっと視覚的にドラマチックだったと思うなあ。ともかく、そこまでの出来がよかったせいでとても残念でした。

いやはや、演出ってやっぱり大事、そう思わせられた演奏でした。


とはいえ全体として今年のベストだったのは、全体的な演奏者のレベルの高さ。リゴレットはほんとに演技がうまかったし、マントヴァはとてもエロイ感じが良く出ててよかった。歌もすごく安定してたし。ジルダは純粋な女の子、って感じの演技はさることながら、透き通るようなきれいな声に聞き惚れました。(アリアの最高音とかをはずして歌ってたのは少し残念だったけど)

そして指揮者がすばらしかった。ドイツ人だけどラテンなノリな演奏で、どんどんと引き込んでいく音楽には、(有名指揮者だけに元々のファンも多いのだろうけど)、演奏開始時点からブラボーの声が飛ばされてました。さすがグルベローヴァの旦那さん。