フィラデルフィアオケ定期 ボレロ他

2007年11月24日

Philadelphia Orchestra

Miguel Harth-Bedoya, conductor
Markus Groh, piano


RAVEL Rapsodie sepagnole
REVUELTAS
/arr. Limantour Night of Mayas

LISZT Piano Concerto No.1 in E-flat major
RAVEL Bolero

指揮者のBedoyaはペルー出身の指揮者。人懐っこい笑顔が印象的。15歳のとき地元の劇場で働いていたら、指揮者に「お前振ってみるか?」と言われて「トスカ」を振ったら意外に上手くいったことがきっかけで指揮者を目指した・・と、まるでドラマのようなエピソードがホームページに語られている。その後、ここフィラデルフィアの名門カーティスで学士終了、そしてNYの名門ジュリアードで修士終了と、アメリカ最高の音楽教育を受け、その後指揮者として活躍している。現在はFort Worth Symphonyの音楽監督

今日の演奏はそんな彼の希望か、前半は南米色の強い内容。とりわけRevueltasの音楽は初めて聴いた(もちろんフィラデルフィアオケでも初演)。20世紀前半に活躍したメキシコの作曲家らしくて、この曲も「マヤ族の夜」という映画の音楽らしい。確かに、いかにも映画音楽、という雰囲気が続いてぱっとしなかったのだが、第四楽章になって、こんなに沢山のパーカッション部隊を同時に見たのは初めて、というくらいにパーカッション攻めにされて、その迫力に圧倒された。曲紹介にはストラビンスキーの「春の祭典」を思い出させる・・と書いてあったが、なるほど、複雑な打楽器の競演にはそんな印象(南米バージョンだが)を受けた。観客もロックのコンサートみたいに大興奮。

今日一番かわいそうだったのは、ピアニストのGroh。この人、ホームページをごらんいただければと思うが、かなり「ビジュアル系」的に売ってるという第一印象だった。金髪のロングヘアを後ろに束ねて、赤い蝶ネクタイで弾く姿はいかにもナルシスト。・・だが、彼の歩き方、お辞儀の仕方、といった振る舞いは、そんなイメージがぶっ飛ぶくらいに三枚目。ビジュアル系な割りにそんなところにギャップを感じて、個人的には演奏前から好印象(単に面白かっただけかも)。
演奏の方は、リストの難曲を、ミスタッチも多少はありつつも結構サラっと弾きこなすあたりはかなりのテクニシャン。ピアニッシモでの速いフレーズなんかの音もとてもきれいだし、パワーもある。だが、何かぐっとくるものが足りない、という感じ。これはリストの曲だからそうなんだろうか、それとも彼の演奏のせい?答えは分からないが、いつか他の曲でも聴いてみたいとは思った。

・・で、何がかわいそうだったかというと、このプログラム構成。前半がエキゾチックな雰囲気で打楽器ドンちゃんで盛り上がった後、彼のリストを機に急に古典・ロマン派的な世界に引き戻されたと思ったら、このコンチェルト、実はものすごく短くてあっという間に終わり。そしてその直後にアメリカ人大好きな「ボレロ」でまたまた前半同様ノリノリな雰囲気でコンサートが締めくくられてしまったから、もう誰も彼のことは覚えていまい。こんなプログラムにどうしてなったんだろう(ちなみに、シーズン当初に予定されていたプログラムでは、プロコフィエフのコンチェルトだった。そのほうが確かに他の曲にはフィットしたと思われるが・・)。今日の彼はまるで「お口直し」的な役回りだったといわざるを得ない。もう少しまともなシチュエーションでもう一度聴いてみたい。あの愛嬌あるお辞儀と歩き方は必見です。