Underground

珍しく映画を観た。アメリカに来て以来、ケーブルテレビで放映される映画を時々見ているが(色々やってくれるのはいいが、コマーシャルがあまりにも頻繁に挟まるのがうざい)、初めてこちらのレンタルビデオ屋でDVDを借りた。

理由はシンプルで、先日ランチをしたセルビア人夫妻から薦めてもらったから。奥さんの方がクラスメートなのだが、彼女は17歳のときにセルビアから米国にやってきて、学部生の時はピアノ科の学生だった、という変わった経歴。MBA1年目に多くの時間をともに過ごし、かつお互いに音楽のファンということで非常に打ち解けたこともあり、今年の5月には彼女の故郷であるベオグラードにまで遊びにいってしまった
旅行の経験を踏まえ、彼女に「セルビアの人たちはとてもアグレッシブで好戦的だよね。平和を好む日本人の僕じゃあSurviveできないよ。」などと話をしていたのだが、「この映画を観るとクレイジーなユーゴのカルチャーがよくわかるわよ」といわれて薦められたもの。

映画のことは全くわからないし、何かをコメントするのも憚られるが、このカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した作品、とてもすばらしかった。
基本的に第二次世界大戦時、ベオグラードナチスに侵攻されるところから話は始まり、終わりは90年代の民族紛争。まさにユーゴスラビアという国の苦痛に満ちた歴史をたどった内容。

観終わったときは、「楽しかった」というよりは、どーんと重いものがのしかかった感じ。すごい中身の濃い映画という印象。時間も長くて、3時間弱もある。
あらゆる登場人物なり、エピソードが実在する(した)人物や物事のメタファーとなっていて、もっと歴史を知っていたらより深く楽しめただろうな、と思う。いずれにしても、このユーゴという国の持つとても複雑な歴史、それを背景とした/その背景にある、人々の気質などがよく表現されてすばらしい作品だと思った。ベオグラードに行かなくても楽しめたと思うが、行ってみたおかげでこの国の複雑さがより実感をもってすとんと納得できた気がする。あの映画の一貫して流れる乱痴気騒ぎにも似た雰囲気は、まさにベオグラードならでは。戦争続きのベオグラード、それでも人は生きてるし悲観的ではない。