「ウィーン気質」 二期会/東京フィル/阪哲朗

オペレッタ全3幕
日本語訳詞上演
台本:ヴィクトール・レオン及びレオ・シュタイン
日本語訳詞:加賀清孝
作曲:ヨハン・シュトラウス
会場: 日生劇場
公演日:
2015年11月22日(日) 15:00

指揮: 阪 哲朗
演出: 荻田浩一

配役
ギンデルバッハ侯爵 小栗純一
ツェドラウ伯爵 与儀 巧
伯爵夫人 塩田美奈子
フランツィスカ・カリアリ 醍醐園佳
カーグラー 米谷毅彦
ペピ     守谷由香
ヨーゼフ 升島唯博
リージ      田中紗綾子
ローリ      山下千夏


久しぶりに二期会オペラ。演目はウィーンの香り満載のオペレッタ
日本語上演というのは一般的にはあまり魅力を感じない(やはりオペラは原語が一番だと思う)のだが、今回の演目は当時の不倫コメディを現代日本にうまく持ち込んだすばらしい日本語訳詞だったと思う。

また、何よりもすばらしかったのは歌い手の皆さん。伯爵役の与儀さんの艶のある声と安定感は本当にすばらしく、彼こそが今の「日本のテノール」だと強く思った。そのほか印象に残ったのはペピ役の森谷由香さん。小柄な体が発するあの高音の響きは世界クラスだと思う。この日は比較的若手を中心としたキャストだったが、皆役柄にぴったりはまって、本当にすばらしいチームだった。

阪さんの指揮によるオケの安定感もすばらしく、歌手を時にあおりつつうまくサポートしていた。絶妙な「枯れ」感と腰の入ったウィーン的なフレーズの応酬には思わず体が動いてしまう。演出の荻田さんは宝塚の人で、オペレッタ初挑戦だったそうだが、無駄をそぎ落としたコンセプチュアルな舞台装置に、バレエダンサーを多用した表現は、このウィンナ・ワルツを主役にした演目にぴったりのすばらしいものだったと思う。(ところであのバレエダンサーは一体なんという方だったのだろうか。)「ややマニアックな演目」×「日本語上演」ということで、正直どんなものかと思って観にいったが、作品全体に聴きなれたウィンナ・ワルツの美しい旋律、それに酔わされた退廃的なウィーン貴族世界の香りがあふれ、本当にすばらしい舞台だったと思う。

それにしてももう15年ほど、波はあるもののちょくちょく二期会のオペラを観にいっているが、近年の日本人オペラ歌手のレベルの向上は本当に著しいと思う。しばらく忙しくてオペラをゆっくり見る機会も減っていたが、また足を運ぶ機会が増えそうだ。